POStudy「現役プロダクトマネージャーが語る、日本企業におけるプロダクトマネージャーの課題と今後の展望」(2015/09/06)
9/6に開催された、プロダクトオーナーシップ勉強会(POStudy)に参加してきましたのでメモを残します。 テーマは「現役プロダクトマネージャーが語る、日本企業におけるプロダクトマネージャーの課題と今後の展望」。
今年の春ごろに 世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本 トップIT企業のPMとして就職する方法 を読んで、これまで自分がやってきた、サービスの開発、運営というのは米国で言うプロダクトマネージャ(PM)の業務なんだということを改めて知り、一般的にはどういうことをしているのかと興味を持っていました。
今回の勉強会では現役のPMの話が聞けるということで、日曜の有償セミナーながら参加してみました。余談ですが、8月中なら4,500円だったところ、迷っている内に申し込みが9月に入ってしまい、5,500円に。1000円損してしまった。
資料やTLは以下にまとめられています。
以下、各セッションについてのコメントとまとめ。
##【基調講演】『プロダクトマネージャーとは』(関さん)
プロダクトマネジメントブートキャンプ(1日研修)の資料を1時間にまとめたもの。プロダクトマネージャの業務の全体を体系的に理解するのにちょうどよい。キーワードを示します。
1.プロダクトマネージャとは
- 特定の製品ラインやブランド、サービスについて、既存の製品の管理やマーケティングを行ったり、新製品開発の役割を負っているミドルマネージャ
- PMの責任(タスク実施順に)
- Ideate(想起)
- Explore(探索)
- Focus(集中)
- Immerse(没入)
- Define(定義)
- Build(構築)
- Launch(立ち上げ) →Ideateに戻る
- プロジェクトマネージャはPMBOKの範囲をマネジメントし、プロダクトマネージャはプロダクトと顧客(市場)をマネジメントする
- 起業家は社外から資金調達を行う、PMはマネジメントチームを説得し社内のリソースを引き出す
- PMに必要な資質は製品に対する熱意、顧客との共感力など、必要なスキルは技術の活用、本当に大事なものだけに集中することなど
- 日本におけるPMアサインは次の3種がある
- プロダクトをリリースしている事業会社の執行役員以上が担う
- 1から期間限定で任命されて、現場のプロダクトの統括的な立ち位置として振舞う
- いわゆる、担当者としてのプロダクトオーナー
2.プロダクトマネジメントとは
- パッケージ・ソフトウェアの世界では開発サイクルが長く、プロジェクトマネージャ=プロダクトマネージャでよかった。
- インターネットサービスの世界では開発サイクルが短く、兼任できなくなってきた。QCDの管理とプロダクトの方向性管理はやることが違う。
- プロダクトマネジメントの体系
- 市場投入までに行うこと(上流=ロードマップ、計画など)
- 市場投入後に行うこと(下流=ライフサイクル管理、マーケティングなど)
- スキル(リーダーシップ、意思決定、価格決定など)
- デザイン(ユーザエクスペリエンス)のマネジメントがスケジュールに必ず入ってくる
3.プロダクトマネジメントとリーダーシップ
- 「マネジメント」は製品を対象とする。「リーダーシップ」はチームを対象とする。ごっちゃにしてはいけない(私はよくやってしまう…)
- プロダクトマネージャはリーダシップを発揮することで多様なステークホルダーを動機付け、まとめていく必要がある。(社内立場における指揮命令系統とは違う流れになるため)
- 目標を与えれば人は動くHowではなくWhatを提示する(さらにその前段でWhyも提示する)
- 模範的リーダーの5つの実施指針と10の実践
- いいアイディアを持つ賢い人達を探す6つの方法
【キーセッション】『個人と組織からもう一度考えるプロダクトマネジャー』(新井さん)
プロダクトマネージャは「顧客」「チーム」「組織」と仕事をしている。それらに対する具体的な解決策について述べられていた。
顧客
- Innovation = solutions that satisfy unmet needs
- プロダクトとは製品、ではない。顧客のニーズや欲求を満たすベネフィットの集合である(ProdBOK)
チーム
- プロダクトマネージャーは人事権を持っていない。そういった中で他部門の人に動いてもらうにはどうしたらよいか?(関さんの話では、それがリーダーシップであるとしている)
- リーダーシップのPM理論。
- P(Performance)機能:目標達成能力
- M(Maintenance)機能:集団維持能力
- 大体のPMはP型(仕事はできるが人望は少ない)の能力を持っている。PとMの両方をできるようにするのは大変だが…
- 定められた目標を達成し、チームをP&Mの方向に引っ張っていく。
- チームのマネジメント。目標だけでは疲弊する。想いのマネジメントが必要ではないか。
- 大きな課題を設定するためのWhyを考える。他者を駆り立てて機会を生み出すようにさせる、そのためにリーダーはWhyを考え続け、伝え続ける。(サイモン・シネックのTEDスピーチ)
組織
- 起業家的マネジメント(サービス立ち上げ時期)におけるリーダーの役割とは?
- 最高の意思決定者ではなく、最高の実験者となること。
- 会社の成長に合わせ、製品開発(ProdDev)→事業開発(BizDev)→組織開発(OrgDev)へと組織が成熟していく
- SFDCのマークベニオフのマネジメント「 V2MOM(vision, value, method, obstacle, measurement)」
- 会社の想いと組織の想いをリンクさせていく手法の一つ
【キーセッション】『プロダクトマネージャーに求められるスキルとマインドセットとは』(丹野さん)
- プロダクトマネージャの仕事→問題の構造とターゲットのインサイトを明らかにし、本質的な機能追加をディレクションする。
- プロダクトマネジメントが行われないと?→すべてのバックログが優先度最高になってしまう。
- 某学習サービス”z”の場合。
- ユーザ課題は単語帳を持ち歩くことが面倒なのではないか?
- NO。学習習慣を作ることに課題を感じていた!
- 競争機能をつけることでDAUが伸びた。
- SteveJobsの言葉。プロダクトを思いついただけでは不十分。実際に偉大プロダクトが完成するまでにはとてつもない量の妥協(トレードオフ)が必要。
- プロダクトマネージャは製品がコケたら全責任を負う。一方で権限はない。だから権限ではなく共感で人を動かす。
- プロダクトマネージャになるには
- プロダクトマネジメントについて学ぶ
- PMのように振る舞う
- サイドプロジェクトを始める
【キーセッション】『シリコンバレーTech企業でのプロダクトマネージャー業務とは?』(柳川さん)
SymantecのAPJパートナーチャネル向け現役プロダクトマネージャとして、仕事の仕方や気付きについて。
- プロダクトマネージャは米国西海岸でも人気の職種。例えばAppleでは第4位。
- 会社のステージによってPMの必要性は変化する。
- 当初はCEOなどが兼ねる。PMの募集が出たらアーリーステージを抜けてきたな、と分かる。
- SymantecではCorePMとPartnerPMがある。
- CorePMは製品やバックエンドサービスのオーナーシップを持つ。B2Cのイメージ。
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PartnerPMはパートナー企業向けに展開するため社内外のステークスホルダーの要求を整理する。B2BやB2B2Cのイメージ。
- 必要なスキルセット。
- PMとしてロードマップをマネジメントする。サービスのEOLの時にこの能力が強く求められる。
- スクラムで言うプロダクトオーナーとして、ストーリーを作成し、順位付けする。
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これがチームの時間を管理することになる。常にWhy?を意識し、Howはチームにまかせている。
- 柳川さんのキャリアはネットワークエンジニア→セールス→PMであり、コードは書けないが、それでもPMはできる。
- プロダクトマーケティングとプロダクトマネジメントの両方ができるとシリコンバレーでも重宝される(4Pのすべてがカバーできるため)
- B2BとB2Cでは求められる特性が大きく異なる。B2CではUXの良し悪しで結果が一桁違う。
- 日本のLinkedInでPMを検索すると13件しかない。仕事内容は同じはずだが、まだ名称がまちまちであることが原因。名前が揃って来ると裾野が広がって来るであろう。
【パネルディスカッション】『日本企業におけるプロダクトマネージャーの課題と今後の展望』
ディスカッションの内容はTwitterで流していました。Togetterにまとめたツイートの16:27以降を参照のこと。
最初の質問を出したのは私でした。回答して頂けてよかった。 まだ体系化されていない、一般化されていない、だが必要な職種ということで、自分から必要性を認識して、そのように振る舞うということ、逆に組織にそういう名前の職種を作るように働きかけること、の2点が必要であるという意見でした。 日本の会社では役職ができることで、その仕事が周囲に認知され、その活動を行えるようになっていく。名前や肩書は大事だ、という意見は深く同意しました。
質問と回答は以下のとおり。
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今からPMになりたい人はどうなっていったらよいか?
- 丹野さん→誰も拾わないボールを拾う。みんなが顔を見合わせるシーンで手を挙げていく。
- 新井さん→社内で誰が何をやっているのかちゃんと理解する。
- 柳川さん→仕事にPMという名前をちゃんとつけて認識する。育てるより素養を持つ人を見つけていく。
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PMがいない場合、経営にその必要性を理解してもらうにはどうしたらいいか?
- 柳川さん→名は体を表す。勝手に名乗ってしまえばいい。自分でトレーニングの機会を見つけていくのがいい。参加の妥当性を主張するためにも名前は必要。
- 新井さん→逆にPMという名前は使わない。イノベーション必要ですよね?から入る。そのためにプロダクトマネジメント必要ですよ。と持っていく。経営陣に刺さる言葉を使っていく。
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丹野さん→PM組織を作ったほうがいい。そういう人を集めやすくなる。うまくいっているならPMを入れなくてもいい。うまくいっていないなら、PMという名前を使わず実績を作っていく。その後経営陣に訴えかける。
この他気になったキーワード
- チームメンバに目的を伝えるには?「伝え方の設計」が必要
- マーケターでもPMになれる
- 雑談が下手でもよい。ファシリテーションができればいいPMになれる
おわりに
この日は初めての参加ということで聞いてばかりの半日になりましたが、混沌としていた自分の知識が体系化されました。次回はアウトプットする方で参加したいですね。
スタッフの皆さん、発表者の皆さん、ありがとうございました。